日本三大織物の中のひとつである博多織を知っていますか?
博多織の帯は、その美しさで江戸時代には、幕府への献上品にも選ばれています。
幾何学模様のような柄が素敵で、つい目が向いてしまいます!
もっと博多織の魅力が知りたいです。
博多織の最大の魅力は、その美しさです。
博多織の美しさとは単に織地の模様や色合いの美しさだけではありません。
博多織の着こなしの装いが醸しだす美しさも人気の秘密です。
この記事では、織地や模様などの見た目だけではない、博多織が美しい言われる理由とその魅力を深堀りします。
- 博多織の美しさ 模様
- 博多織の美しさ 利便性
- 博多織の美しさ 多様性
- 博多織の美しさを作り出す製造元
ご紹介する製造元5社は博多織の伝統を守りながら、時代に合った博多織の可能性にも挑戦しています。
和装だけでない様々な形の博多織の魅力をお楽しみくださいね。
博多織の美しさ 3つの理由
博多織の美しさには、3つの理由があります。
その理由は、見た目だけではありません。
使いやすさや、使われている用途にも理由があるのです。
この章では、博多織が美しい理由3つについて紹介します。
- シンプルで気品あふれる模様
- 一度締めたら緩みにくい着こなしやすさ
- 和装だけにとどまらない多様性
それでは、博多織の魅力を深掘りしていきましょう。
シンプルで気品あふれる模様
博多織と言えば、博多織7品目の中のひとつ、献上柄の模様が代表的です。
江戸幕府に献上していたからその名がついた献上柄。
「親子縞」「孝行縞」「独鈷」「華皿」とそれぞれ意味をもつ柄で規則正しく構成されています。
親子縞 | 親が子を守るという意味をもつ |
孝行縞 | 子が親を慕うという意味をもつ |
独鈷 | 煩悩を打ち砕くと言われている密教の法具 |
華皿 | 仏様を供養する時に、花を入れる仏具 |
幾何学模様の規則正しい柄は、気品がありながらも、どこか親しみを感じさせます。
こちらの写真は、シンプルな献上柄で、気品がありますね。
こちらは色鮮やかな博多織の半幅帯です。
浴衣に合わせるとそれぞれ個性が引き立ちますね。
この写真は博多織の帯に風神雷神の模様をあしらっています。
凜としたたたずまいが、素敵ですね。
博多織の模様は気品あふれる模様が多いことが、愛される理由です。
博多帯の模様については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
ぜひあわせてお読みくださいね。
一度締めたら緩みにくい着こなしやすさ
博多織と言えば帯。
博多織の帯の最大の魅力は締めやすさにあります。
博多帯は締める際に「キュッ」という音が出ますが、これは絹鳴りといって上質な帯であることの証明です。
博多織の職人の間では「キュッと鳴れば一人前」と言われています。
その秘密は、独特の織り方です。
博多織は経糸が多く使われていることが特徴で、通常4,000~5,000本使われる経糸が6,000本以上使われています。
細い経糸を多く使うことによって、密度が濃くなり、丈夫でしっかりとした緩みにくい帯になるのです。
博多帯を使った着こなしが美しいと言われるゆえんは、丈夫で緩みにくいという特徴があるからなのです。
続いて、この博多帯が日本の伝統文化のなかで、どのように愛されてきたかを紹介します。
相撲取りの着こなし
相撲の世界では、幕下力士になると博多織の男帯を締めることが許されるというしきたりがあります。
下積みから番付をあげていく厳しい世界の中で、博多織の帯を締めることはステータスとなっているのです。
写真は伊勢ノ海部屋の鳴滝関です。
博多帯の献上柄の男帯がお似合いですね。
落語家の着こなし
江戸前の落語の世界では、真打制度があり、前座の修行中は羽織、紋付、袴を着用することはできません。
二ツ目に昇進して、これらを着用できるようになります。
普段は着流しで高座に上がる落語家にとって、緩みにくい博多織の帯は無くてはならないアイテムになっています。
真打に上がると、お祝いとして贈られた博多織の男帯を締めて、高座にあがるという一門もあるそうです。
春風亭昇太さんの素敵な着こなしをご覧ください。
博多織の帯は、締めやすく使いやすいからこそ、日本固有の文化のなかで長く愛されてきたのですね。
続いて、その他でも博多織が使われている例をご紹介します。
和装だけにとどまらない多様性
博多織は美しさ、親しみやすさから、いろいろな場面で使われることが多いです。
ここでは、こんなところにもと驚かれる例を紹介します。
フィギュアスケートのメダルストラップ
2013年、福岡で行われたフィギュアスケートのグランプリファイナルのメダルストラップは、博多織を制作しているサヌイ織物が製造していました。
献上柄が使用されていて、メダルを引き立たせていますね。
企業の工場見学記念品
博多織は企業の記念品としても、大活躍しています。
こんな素敵なタンブラーで飲む飲み物は、さらにおいしく感じられそうです。
ネクタイ
博多織が着物や帯以外でよく使われる定番商品のネクタイです。
帯と同じで締めやすいので、贈答用としても人気があります。
グッズ
最後は福岡に拠点を置くサッカーチーム、アビスパ福岡とのコラボ商品の小銭入れです。
チームロゴ入りで、チームカラーの小銭はファンのとってテンションの上がる品物ですね。
博多織が、さまざまな商品になって、身近に感じられることは素敵なことですね。
では、帯や着物の博多織やこれらの商品はどこでつくられているのでしょうか?
次の章では、博多織を生み出している製造元を紹介します。
博多織を作り出す製造元 5社
江戸時代に幕府の献上品に指定されていた博多織。
明治時代までは「織屋株」という称号の特権が織屋に与えられていました。
廃藩置県の実施とともに「織屋株」は廃止となりましたが、博多織を守るために博多織工業組合が設立されました。
この章では、この組合の中から主な製造元5社を紹介します。
- 西村織物株式会社
- 株式会社鴛海織物工場(HAKATA JAPAN)
- 筑前織物株式会社
- 株式会社サヌイ織物
- 株式会社はかた匠工芸
それでは紹介していきますね。
西村織物
西村織物は、創業160年を誇る博多織最古の織元です。
1587年、生糸貿易商人として始まり、輸入が禁止された江戸時代に、織物屋として創業しました。
現在は「絹よ輝け、人よ輝け」の制作理念のもと、様々な分野で博多織を展開しています。
こちらのインスタグラムは、リッツカールトン福岡の装飾を彩っている織物を紹介しています。
生地を使ったアートパネルやパーテンションなど、圧巻ですね。
株式会社鴛海織物工場(HAKATA JAPAN)
株式会社鴛海織物工場は1928年創業の博多織メーカーです。
絹織物や帯地をもっと違うものに使えないかと、2000年に立ち上げたブランドがHAKATA JAPANです。
高度な技術で作られた博多織の伝統とオリジナルを融合させて,財布やバック、宝飾品とのコラボ商品などを展開しています。
写真は、クリスマスに発売された博多織のポーチです。
博多織の生地を使ったバングルです。
とても豪華ですね!
筑前織物株式会社
1949年創業の筑前織物は「伝統と革新をお届けする」を掲げている織元です。
多くの作品が、内閣総理大臣賞などを受賞していますが、新しい試みにも挑戦されています。
こちらの写真は、将棋盤の淵に博多織の生地を使用しています。
気品があふれていますね。
博多ラーメンのお店のラーメン鉢のデザインも手掛けられています。
伝統工芸士がデザインした器はラーメンの味も引き立てていることでしょう。
株式会社サヌイ織物
サヌイ織物の前身はサヌイ袋織財布開発と言い、昭和44年にサヌイ織物が設立されました。
現在も特殊な技法で作られる縫い目のないサヌイ袋織財布は、販売されています。
その他、前章で紹介したフィギュアスケートのメダルストラップなど様々な商品や映画の衣装制作も携わっていたりと、幅広く博多織を展開しています。
下の写真は、生地の販売の写真です。
博多織でスーツやドレスをオーダーできるのは素敵ですね。
また、舞台の緞帳の制作も数多く手がけています。
こちらは福岡市の地域交流センターの緞帳です。
日本的な厳かな緞帳ですね。
株式会社はかた匠工芸
はかた匠工芸は、滝本絹織物株式会社として、昭和30年に誕生しました。
現在の法人名は2007年に登録されています。
伝統工芸士8名が在籍しており、博多織の制作を支えています。(2024年3月現在)
こちらの写真は、博多織の伝統工芸士に最年少で認定された方の作品紹介です。
ほぼ毎日、織物に携わっている方がこのように作品や制作過程を投稿されています。
楽しい投稿ですので、ぜひインスタグラムでご覧ください。
こちらの写真は、博多織求評会で受賞された作品です。
とても迫力のある模様で引き込まれますね。
博多織の製造元5社の特長や制作アイデアを紹介しました。
これからも、たくさんの作品を展開していただきたいですね。
博多織の美しさの秘密は伝統を守り、改革を進める製造元の努力にあった!
博多織の美しさの秘密について深堀りしてきました。
博多織の魅力を振り返ってみましょう。
江戸幕府に献上されていた伝統だけでなく、模様の意味の奥深さを知ると、よりその美しさの秘密がわかります。
親子縞 | 親が子を守るという意味をもつ |
孝行縞 | 子が親を慕うという意味をもつ |
独鈷 | 煩悩を打ち砕くと言われている密教の法具 |
華皿 | 仏様を供養する時に、花を入れる仏具 |
「キュッと鳴らして1人前」と言われる博多織の職人が作りあげた帯には、日本伝統文化に息づいています。
- 相撲界では、幕下力士から男帯を締めることができる
- 江戸前の落語界では、真打昇進のお祝いとして贈られることがある
帯や着物だけでなく、博多織の生地を様々な形に変えて世に送り出しています。
- フィギュアスケートのメダルストラップ
- 企業の記念品
- ネクタイ
- サッカーチームのグッズ
- 将棋盤の淵
- 緞帳
あなたの身近にも、博多織が使われている製品があるかもしれませんね。
この伝統と改革を支えている製造元の多くは、博多織工業組合に加盟しています。
今回はその中から5社を紹介しました。
- 西村織物株式会社
- 株式会社鴛海織物工場(HAKATA JAPAN)
- 筑前織物株式会社
- 株式会社サヌイ織物
- 株式会社はかた匠工芸
ご紹介した製造元5社は、それぞれの特長を生かして博多織の製造と普及を支えています。
和装の機会は減ったと言われていますが、一方で、和装がもう一度見直されてきています。
インバウンドによる外国人観光客の増加などで和装への関心は少しずつ高まっているのです。
今、多くの人を魅了する博多織の美しさは、絶え間なく作り続けた職人の努力の賜物なのでしょう。
あなたも、博多織の帯やネクタイ、宝飾品などを手に取って、博多織を楽しんでみませんか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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