母が使用していた古い帯があるんだけど、なんかカビ臭いのよね。
自宅で洗っていいのかしら?
柄がとても気に入っている古い帯を処分するのはしのびなくて、ずっとしまいっぱなし……。シミがあるけど、有効に活用する方法はあるの?
今の50代で着物を着る機会がある人は、少なくなっていますよね。
だからといって、母親が使用していた大事な帯を処分するのは気が引けるのは、よくわかります。
しかも、シミがあったり少しでもカビ臭がしたりすると、さすがに着用できないので、せめて洗っておきたくなるでしょう。
そもそも帯は、自宅で洗えるのでしょうか?
この記事では、古い帯のお手入れや活用方法について解説していきます。
- 古い帯は洗えるのか
- 古い帯のお手入れ方法
- 着用しない古い帯の洗いかたと活用方法
これであなたの疑問が解消されて、古い帯の対処法に困らなくなりますよ。
ぜひ、読みすすめてくださいね。
古い帯は自宅で洗えるの?
結論からいうと、帯を自宅で洗うのはおすすめできません。
その理由は大きくわけて3つあります。
- 洗えない素材の帯が多い
- 帯芯や接着芯がはがれやすくカビやすい
- 繊細な加工が崩れやすい
それぞれ解説していきましょう。
洗えない素材の帯が多い
着物用の帯は正絹(シルク)を使っているものが多いため、基本的には洗えません。
正絹は天然素材であるがゆえに、以下のデメリットがあります。
- 色が変色しやすい
- カビが生えやすい
- 摩擦に弱い、生地の糸の太さにより毛羽立ちやすい
- 水に弱く、形崩れしやすい
そのため、水洗いをすると縮みやすく、素人では元に戻すことがかなり難しいのです。
正絹だけでなく、綿や麻など天然素材の帯も同様に、型崩れや縮みなどのリスクが高くなります。
家庭で洗えるポリエステル素材の帯が普及していますが、古い帯は天然素材で作られているものが多いですね。
帯芯や接着芯がはがれやすくカビやすい
帯を水洗いすると、帯芯や接着芯がはがれやすくなります。
帯袋には帯芯と呼ばれる芯が入っており、以下のような働きがあります。
- 生地にハリを持たせてきれいに見せる
- 湿気を吸い取る
- 生地の傷みを遅らせる
このように帯芯は、帯の形状をきれいに保つためにあるのですね。
そのため、水洗いで帯本体と帯芯の縮み具合がそれぞれ異なると、よじれてしわが寄ってしまいます。
帯の生命線といってもいい帯芯がはがれ、よれよれになってしまうと、きれいに結ぶことができません。
さらに、帯は分厚いため自然乾燥ではなかなか乾きません。
このような状態のまま保管すると、湿気によりカビが発生してしまい、同じ場所に保管している帯や着物などにカビが移るリスクがあるので注意が必要です。
帯にカビが生えてしまうと、臭うだけでなく生地の表面も変色するという悲しい事態に……。
繊細な加工が崩れやすい
帯は繊細な絹糸などで加工が施されているものが多いため、水洗いで繊維がのびてしまいます。
刺繍糸から染料が流れ出て色落ちすることもあるので、美しい装飾が見るも無惨な姿になってしまうことも……。
さらに高級品だと、絹糸だけでなく金箔や銀、プラチナが使われていることもあります。
そもそも繊細な加工や刺繍をふんだんに施した帯は、水洗いすることを想定していないものがほとんどです。
確かに。帯のつくりがわかると、水洗いできない理由も納得ね。
帯の素材は縮みやすいものがあるので、自宅で洗うのはなるべく避けましょう。
本当に自分で洗って大切な帯の形がくずれたり、色が変色したり金箔がはげたりしたら、もう修復不可能。
完全に乾かしたつもりでも、後でカビの発生など、本当に帯の手入れは大変なことばかりです。
タンスに眠る古い着物帯の手入れに悲鳴を上げる前に、着物買取を考えてみるのも一考ですよ。
着物買取の無料見積もりを比較できる下記の記事も、ぜひ合わせてお読みください。
押さえておきたい!古い帯のお手入れ方法5つ
自宅で古い帯を洗えないとなると、普段のお手入れが大事になります。
帯は洋服のように気軽に洗濯ができませんし、すぐにしまうことができません。
そのため、収納する前や保管したあともひと手間をかける必要があります。
- 帯をほどいたらすぐにメンテナンスをする
- 1年に2回は天気の良い日に部屋干しする
- たとう紙を1年に1回交換する
- 防虫剤・除湿剤のメンテナンスをする
- クリーニングに出す
大切な帯を気持ちよく保管するために、この5点を押さえておきましょう。
帯をほどいたらすぐにメンテナンスをする
帯をほどいたらそのままにせず、すぐにメンテナンスをします。
- 着物ハンガーなどにかけて十分に陰干し
- 汗をかいたらかたく絞ったタオルで裏面をたたいて汗抜き
- 和装用のブラシでチリやホコリをよく落とす
- たとう紙に包んで通気性のよい場所に収納
上記①〜③の処置をするときに、必ず湿気を飛ばすようにしましょう。
少しでも水分を含むと湿気がこもりカビやすいため、古い帯ほど手間をかけることが大切です。
1年に2回は天気の良い日に部屋干しする
1年に2回は帯を出して、部屋干しをしましょう。
しまいっぱなしだと帯に湿気がこもるため、部屋干しをして湿気を払います。
その際、以下の3条件を守るのがポイントです。
部屋干しの条件
- よく晴れた日
- 風通しの良い日陰
- 10〜15時のあいだの3~4時間
なお、前日が雨の場合や翌日に雨の予報があった場合は、湿度が高くなるので避けましょう。
湿気の多い日に干した後に収納するとカビが生えやすくなり、部屋干しをしている意味がなくなります。
たとう紙を1年に1回交換する
たとう紙は防湿性がありますが、効果に期限があるので1〜2年に1回は交換しましょう。
たとう紙を何年も使い続けると、以下のような変化が起きます。
- 湿気を吸いとって変色する
- 茶色の斑点のようなシミが出る
- カビが生えて帯に移ってしまう
そのため、1〜2年過ぎて吸湿性が弱まったタイミングが替えどきです。
たとう紙はなるべく伝統的な和紙製品を使いましょう。
繊維の特性で、通気性が良く表面にざらつきがあるから、中の帯が滑りにくいのです。
防虫剤・除湿剤のメンテナンスする
防虫剤や除湿剤のメンテナンスも大事です。
除湿剤を長い間放置すると、湿気を含みカビが発生しやすくなるため、年に1回変えましょう。
交換するタイミングは、帯の部屋干しやたとう紙を交換するときがおすすめです。
また、シミや変色の原因になるので除湿剤や防虫剤は1種類だけ使い、帯に触れないように収納箱の四隅に入れてくださいね。
このほか、備長炭シートを使うのもおすすめ。
備長炭シートの持つ調湿性によって帯を最適な湿度に保つことができ、防虫・抗菌・消臭効果もあります。
さらに持続効果が半永久的のため、交換の手間が少なくメンテナンスが楽です。
帯の上手な手入れの仕方と保管方法の詳細をもっと知りたい方は、合わせてお読みください。
クリーニングに出す
目立つシミや汚れは素人では対処できないので、着用する場合はクリーニングに出しましょう。
古い帯には、長い間さまざまな要因で積もったシミや汚れがついているため、専門業者に依頼するのがベストです。
ただ、せっかくクリーニングに出しても、シミや汚れが落ちなかったという残念な結果になることも。
部屋干ししていないし、たとう紙も交換していなかったわ!
着用しなくても、普段のお手入れが大事なのね。
着用しない古い帯でも、母親の思い出があるものをなかなか処分する気にはなれないですよね。
もう着る機会がないのであれば、思い切ってリメイクして生まれ変わらせましょう!
リメイクすれば、汚れやシミがない部分を使ったり、見えないように作ったりできますよ。
次の章では、リメイクを前提として自宅で帯を洗う方法をお伝えします。
リメイク前提で古い帯を自宅で洗う方法
これまで挙げた理由から、自宅で古い帯を洗うのはおすすめしません。
しかし、「リメイクするために帯を洗う」のであれば、手洗いは可能です。
まずは、古い帯を手洗いする前に注意したいことから説明していきますね。
古い帯を洗う前に注意したいこと
古い帯を着用する機会がある場合は、手洗い厳禁です。
先述したように、帯は自宅で洗うことを想定していないため、形崩れをおこしてきれいに結べなくなります。
そのため、これから紹介する手順は着用しない古い帯を使うようにしましょう。
古い帯の手洗い手順
では、古い帯を洗う手順をStepごとに解説していきます。
帯の素材に多く使われている正絹は、たんぱく質でできています。
人間のからだと同じですね。
そのため、38〜40度程度のお湯を使って汚れを浮かして落とします。
もちろん、水やぬるま湯でもいいですが、お湯のほうが汚れ落ちがしやすいでしょう。
色落ちや柄落ちしないかを確認するために、帯の端をそっとお湯にひたします。
色落ちする場合は、どんどん色はげしてしまうので、すぐに引き上げるか、手早く湯通しするだけにしましょう。
帯に色あせやしわなどの大きな変化がなければ、お湯につけてよい判断基準になります。
STEP2で色落ちや柄落ち、しわなど大きな変化がないことを確認したら、帯全体をお湯につけます。
丸めて入れるとしわが取れなくなるので、蛇腹状に帯を折りながら、少しずつお湯の中に入れていきます。
お湯が少なくなったら、帯にかけないようにそっと横から足し湯しましょう。
基本的に帯は手洗いできないため、洗剤を使いません。
洗剤を使うと、何度もすすぎをすることで水に浸かる時間が長くなり、ダメージがより大きくなるためです。
帯全体がつかったら、軽くマッサージするくらいの力加減で押し洗いします。
色落ちをしていない場合は、お湯をかえてすすぎをしても大丈夫です。
洗い終わったら、洗濯機で脱水します。
帯は分厚いので、乾くのに時間がかかります。
洗濯ネットに入れるとかたよってしまうため、帯の柄を内側にしてそのまま洗濯機に入れましょう。
普通に回すとよれて縮んでしわになるので、おしゃれ着モードの脱水で20秒ほど回します。
それだけで結構水切りができますよ。
脱水が終わったら柄が内側になるように、着物用ハンガーなどにかけます。
色焼けしないよう、陰干ししてしっかりと乾かしましょう。
梅雨期や真冬に洗うときは、除湿機や布団乾燥機を使って水分を飛ばします。
洗い終わった帯はしわがよるため、リメイクする前にアイロンを当て布の上から押さえるようにかけてのばしましょう。
帯をエマールを使って洗った記事も合わせてお読みください。
洗った帯をリメイクしよう
古い帯がきれいになったら、いつでも手元に置けるようなものにリメイクしましょう。
- バッグ(クラッチ、ショルダー、サブ)
- 小物入れ(ポーチ、ペンケース、メガネケース)
- インテリア(クッション、コースター)
このように古い帯の柄を生かして、さまざまなものに生まれ変わらせることができます。
素敵!手洗いするのは大変だけど、帯の柄がとても気に入っているから、クッション作りにチャレンジしてみるわ!
いいですね!お母さまが大事にされた帯を身近なものに活用できるので、ぜひ挑戦してみてくださいね!
以下の記事は、パソコンバッグやクラッチバッグのリメイク方法を紹介しています。
ぜひ参考にして、素敵なバッグを作ってみましょう!
古い帯のメンテナンスと自宅で洗う方法 まとめ
古い帯は手洗いができないため、処分に困ったらリメイクするのがおすすめです。
そもそも帯自体、以下のような理由から手洗いすることを想定していません。
- 洗えない素材の帯が多い
- 帯芯や接着芯がはがれやすくカビやすい
- 繊細な加工が施されている
そのため、普段のメンテナンスが大事になることをお伝えしました。
- 帯をほどいたらすぐにメンテナンスをする
- 1年に2回は天気の良い日に部屋干しする
- たとう紙を1年に1回交換する
- 防虫剤・乾燥剤のメンテナンスをする
- クリーニングに出す
メンテナンスをしていても、古い帯には長年の汚れがどうしても積もってしまいます。
着用せずに残しておくなら、以下の手洗い手順を試して再活用する方法もありますよ。
古い帯の手洗い手順
- 38〜40度のお湯をためる
- 帯の端をお湯につけて色落ちチェック
- 蛇腹折りにしながら帯全体をお湯につける
- 押し洗いしてお湯をかえてすすぐ
- 洗濯機に入れて脱水する
- ハンガーなどにかけて干す
母親から受け継いだ大事な帯をずっとしまいっぱなしにするよりも、素敵に生まれ変わらせてあげると帯たちもきっと喜ぶでしょう。
普段の着物帯の普段のメンテナンス・帯の手入れ全般を、もう一度確認されたい方は以下の記事がおススメです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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