スワトウ刺繍の帯|3つの特徴と後悔しないお手入れ・保管方法

読者さま

母から綺麗な帯をもらったんだけどこの刺繍は何かな?
レースのような刺繍でとっても綺麗!中国の有名な刺繍みたいなんだけど……

レミ

レースのように繊細で、布地に透かし模様が施されているなら、中国三大刺繍のスワトウ刺繍かもしれません。

レースの優雅さと東洋の緻密な技が融合した汕頭(スワトウ)刺繍だったら、それは親御さんが選び抜いた最高級の芸術品です。

この記事では、中国三大刺繍のひとつであるスワトウ刺繍の歴史と三つの特徴を分かりやすく解説し、大切なスワトウ刺繍帯を、長く美しく保つための日常のお手入れ・保管法まで徹底的にお伝えします。

この記事でわかること
  • 中国三大刺繍の基礎知識
  • スワトウ刺繍の三つの特徴
  • スワトウ刺繍帯の日常のお手入れ・保管方法
レミ

この記事を読めばスワトウ刺繍の基礎知識を身につけて、お母様から受け継いだ帯を綺麗に保つことができますよ。

ぜひ最後までお読みくださいね。

目次

スワトウ刺繍とは?知っておきたい中国三大刺繍の基礎知識

スワトウ刺繍とは、蘇州(そしゅう)刺繍・相良(さがら)刺繍とともに中国三大刺繍に数えられ、世界に誇る職人技の一つです。

中国三大刺繍
  • 汕頭(スワトウ)刺繍
  • 蘇州(そしゅう)刺繍
  • 相良(さがら)刺繍

中国三大刺繍のそれぞれの特徴と、スワトウ刺繍の歴史を一緒にみていきましょう。

蘇州刺繍

蘇州(そしゅう)刺繍とは、中国江蘇省の蘇州で始まった刺繍で、髪の毛よりも細い糸を縫い重ねて模様を作る技法です。

細い糸を使用し盛り上がらないように刺繍をする為、平面的で布地が波立たない仕上がりになるのが特徴です。

こちらは蘇州刺繡の技法で作られた最高級の本袋帯で中国でも唯一の存在とされる技術を持った蒋雪英(しょうせつえい)の手刺繍となっています。

引用:Instagram

相良刺繍

相良(さがら)刺繍は、生地に糸を通して結び玉を作り、その結び玉で模様を作る技法で玉縫いとも呼ばれる刺繍です。

結び玉で模様を作るため、糸が引っかかりにくく丈夫で立体的な仕上がりになり、上品な雰囲気になるのが特徴です。

日本には奈良時代に伝わったとされ、玉結びには「縁を結ぶ」という意味があることから、相良刺繍は縁起の良いものとされています。

そのため、婚礼衣装にも相良刺繍が施されたものをよく見かけます。

また仏像の頭の部分、羅仏(らほつ)という巻き毛にも相良刺繍の技法が使用されていたそうです。

こちらの画像はしぼ織と相良刺繍を用いた帯で、思わず指先でなぞってみたくなるようなふっくらとした立体感が魅力的です。

引用:Instagram

スワトウ刺繍

レミ

蘇州刺繍・相良刺繍どちらも素敵ですが、スワトウ刺繍は透け感と立体的な表現で、他の二大刺繍とは一線を画す華やかさと優美さを持っていると言われていますよ。

スワトウ刺繍は、中国の広東省にある港町、汕頭(スワトウ)が発祥の地です。

汕頭にはもともと独自の刺繍技術がありましたが、その技術が飛躍的に発展したのは、18世紀頃にヨーロッパからキリスト教の宣教師によって西洋のレースや刺繍技術が伝えられたことがきっかけです。

中国古来の精緻な手仕事と、西洋の穴を開けて透かしを作るという技術が融合し、世界に類を見ない独自の刺繍文化が広まったと言われています。

繊細と優雅さから絹の彫刻とも呼ばれ、世界中で愛されています。

こちらのように暗めの色の着物も、スワトウ刺繍帯を身につけると華やかな印象になりますよね。

引用:Instagram

繊細な職人技の帯|スワトウ刺繍の三つの特徴

スワトウ刺繍の特徴を詳しくみていきましょう。

スワトウ刺繍の三つの特徴
  • 繊細な透け感
  • 美しい空間を生むアップリケ
  • 立体的な玉留め(フレンチノット)の多用

機械刺繍では表現できないこれらの職人技が、帯に豪華で美しい世界を描いています

繊細な透け感

スワトウ刺繍最大の特徴であり、美しさの源泉が透かし模様です。

こちらはハンカチですが、とても繊細な透かし模様が施されているのがわかります。

引用:Instagram

ドロンワーク(引き抜き・かがり)カットワーク(切り込み)と呼ばれる技法で実現されます。

主に下記の二つの手法から透け感を表現しています。

抽綉(ツオシュウ)布の縦糸や横糸を数本引き抜き、残った糸をかがっていくことで、レースのような透かし模様を生み出す
拉綉(ラシュウ)糸を強く引いて生地の織り目を広げ、穴を開ける手法

帯の裏側から見ても、穴の周りの刺繍が非常に精巧で、光にかざすと透けて見える点が、他の刺繍との決定的な違いです。

美しい空間を生むアップリケ

スワトウ刺繍では、地色とは異なる色の別布を花のモチーフなどに切り取り、それを帯地に重ねて刺繍で縫い止めるアップリケの技法が用いられています。

別布を使うことでモチーフに深みと立体感を与え、柄の輪郭がはっきりと際立ち、遠目からでも豪華です。

この技法によって、繊細な透かしの中に、色彩豊かな花や鳥のモチーフが生き生きと浮かび上がり、帯全体に奥行きが生まれます。

立体的な玉留め(フレンチノット)の多用

小さな粒々が集まって描かれた、立体感のある模様も、スワトウ刺繍の重要な特徴です。

この特徴は玉留め(フレンチノットステッチ)と呼ばれる技法がなせる技です。

糸を針に数回巻き付けて刺し小さな玉状の粒を作り出すことで、花の雄しべや小さな実など立体的な表現に用いられます。

この玉留めが帯の表面にランダムな凹凸を作り出し、光を浴びることで豊かな陰影を生み出します。

引用:Instagram

スワトウ刺繍は手刺繍工芸の最高峰とも言われています。

いまではスワトウ刺繍技術の伝承も難しく、より一層貴重な逸品です。

現在市場に出回っているスワトウ刺繍は機械刺繍されたものが多いと言われていて、同じスワトウ刺繍でも手刺繍と機械刺繍を比較すると品格は雲泥の差です。

読者さま

手刺繍と機械刺繍の見極め方はあるの?

レミ

見分け方の一つに裏面を見て糸が玉結びや糸端で処理され、均一ではないのが特徴です。
職人技ならではの立体感と温かみがありますよ!

美しさを長く保つために|スワトウ刺繍帯の日常のお手入れ・保管方法

親御さんから受け継いだ帯は年月を経ているため、特にデリケートです。

貴重なスワトウ刺繍帯の美しさを守り、後世に残していくためには日頃のお手入れと、しっかりとした保管が重要になります。

読者さま

大切に保管しておきたいけどどうすればいいのかな?

レミ

日常のお手入れ・保管法のポイントをしっかり押さえましょう。

お手入れ方法

スワトウ刺繍帯は、ドロンワーク(透かし)の部分に糸が密に使われているため、引っかかりやすく糸が飛び出てしまう可能性があります。また、刺繍部分に汚れや湿気が残りやすい特徴があります。

帯を使用した直後は、汗や湿気が残っているためそのままにしておくのは危険です。

最初に柔らかい布や着物用ブラシで、帯の表面、特に玉留めなどの立体的な部分に溜まったホコリを優しく払います。

刺繍部分を強く擦ったり、粘着力の強いテープを使ったりするのは、ほつれの原因になるため厳禁です。

すぐに畳まず、陰干しで半日から1日風を通しましょう。

直射日光は色あせや生地の変質をまねくため、必ず風通しの良い日陰に干してください。

お手入れ方法
  1. 最初に柔らかい布や着物用ブラシで立体的な部分に溜まったホコリを優しく払う
  2. すぐに畳まず、陰干しで半日から一日風を通す

自宅での洗濯は避け、専門のクリーニング店に依頼するのが安心です。

応急処置の方法

読者さま

ちょっとほつれてる箇所があったのだけれども、どうしたらいいの?

刺繍糸がほつれて一本でも飛び出ているのを見つけたら、決して引っ張ったり、根元から切ったりしないでください。

ほつれが広がる原因になり、さらに悪化する可能性があります。

先の細い針などで、周りの刺繍の中にそっと押し戻すのが最善の応急処置です。

広範囲の場合は、必ず専門家にご相談ください。

保管方法と注意点

スワトウ刺繍帯を長期にわたって綺麗に保存するためには、「湿気」と「虫」から守ることが重要です。

対策
  • 虫干し 年に2〜3回
  • たとう紙の利用
  • 湿気が溜まりにくい場所で保管
  • 防虫剤を使用

虫干しは梅雨明け、乾燥した秋など湿気の少ない晴れた日を選んで、風通しを行う時間を設けましょう。

風通しを行うことで、湿気を飛ばしカビや虫食いを防ぎます。

帯を包むたとう紙は、湿気を吸う役割があります。

たとう紙が黄ばんできたら、湿気が飽和しているサインです。

レミ

たとう紙は数年おきに新しいものに交換してあげましょう。

帯は湿気がたまりにくい、タンスの上の方で保管するのが理想です。

たまにタンスを開けて新鮮な空気を入れるだけでも湿気対策になります。

防虫剤は複数の種類の防虫剤を混ぜて使わないようにしてください。

化学反応を起こし帯の金銀糸や刺繍にガス焼けというシミを作ることがあるため、必ず1種類に統一し、帯に直接触れないように置きましょう。

これらの手入れと保管を実践することで、親御さんから受け継いだ美しいスワトウ刺繍帯を次の世代へと繋いでいくことができます。

レミ

上記の点に注意して、安全な環境で保管しましょう。
大切なスワトウ刺繍帯を守ることに繋がります。

スワトウ刺繍帯の価値を守り、次の世代へ


スワトウ刺繍とは中国三大刺繍のひとつです。

職人技であるスワトウ刺繍の3つの特徴をおさらいしましょう。

スワトウ刺繍の3つの特徴
  • 繊細な透け感
  • 美しい空間を生むアップリケ
  • 立体的な玉留め(フレンチノット)の多用

親御さんから受け継いだ帯は年月を経ているため、特にデリケートで取り扱いには注意が必要です。

長く綺麗に保つためのお手入れ方法は下記のとおりです。

お手入れ方法
  1. 最初に柔らかい布や着物用ブラシで立体的な部分に溜まったホコリを優しく払う
  2. すぐに畳まず、陰干しで半日から一日風を通す

スワトウ刺繍帯を長期にわたって綺麗に保存するためには、「湿気」と「虫」から守ることが重要です。

対策
  • 虫干し 年に2〜3回
  • たとう紙の利用
  • 湿気が溜まりにくい場所で保管
  • 防虫剤を使用

もしいずれ手放すという選択をする時が来てもスワトウ刺繍の特徴や正しいお手入れの知識は、帯の価値をしっかり守り、次の持ち主へ安心してお渡しできるでしょう。

読者さま

スワトウ刺繍帯ってこんなに貴重なものだったんだ。

レミ

スワトウ刺繍帯は、時を超えて受け継ぐに値する宝物です。ぜひ大切保管してくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

「ビーナスの帯」ブログ監修者   ショウジさんのご紹介 
  • 京都着物コンサルタント協会 上級着物講師
  • 「きもののやまと」で専属講師の経験を活かし、
    コミュニティセンターや自宅等で30年の指導の実績
  • 踊りの発表会や成人式等で着付けを100人以上こなす
  • 茶道や華道の日本の伝統文化をこよなく愛す

LINE友だち登録はこちらから

↓帯リメイクに興味ある方、10個の無料プレゼントがもらえます↓

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次