もっと着物を身につけたいけれど、帯がうまく締められないから尻込みしちゃう。
着慣れていない人でも使いやすい帯はあるのかしら?
帯は、和服を着慣れていない人にとってハードルが高いアイテムです。
最初はきれいにまとまっていたはずなのに……気がついたらくずれてしまった!という経験、ありますよね。
安心してください!
そんなあなたにぴったりの帯がありますよ。
博多織の帯ならうまく締められなくても、ほとんどくずれることはありません。
そのため、初心者でも扱いが簡単です。
男性用の帯として有名でしたが、シンプルなデザインが着物と合わせやすく、今では女性にも人気があります。
博多織の特徴は、「独鈷(とっこ)」、「華皿(はなざら)」、「縦縞(たてじま)」で構成される紋様です。
これらの紋様は、魔除けや子孫繁栄などの意味が込められています。
今回は、博多織帯が使いやすい理由と、その歴史や制作工程を解説しますね。
- 博多織の帯の使いやすさの理由
- 博多織の歴史
- 博多織の制作工程
博多織帯の使いやすさがわかると、あなたもきっと身につけたくなりますよ。
それでは、お読みください!
博多織帯の使いやすさの理由
博多織でできた帯の使いやすさは、なんといっても独特の織技法によるものでしょう。
博多織の帯が使いやすいといわれるおもな理由は、3つあります。
- 丈夫でしっかりしている
- くずれにくい
- シワが残りにくい
それぞれ解説していきますね。
丈夫でしっかりしている
博多織は、丈夫でしっかりしている織物です。
その秘密は、経糸(たていと)が通常の織物より多く使われていることにあります。
通常の帯で使う経糸が4,000本~5,000本のところ、博多織は6,000本以上用います。
ときには10,000本を超えるものもあり、かなり密度が高いのがわかりますね。
糸の密度が高いというと、そのぶん帯そのものが重いイメージがするでしょう。
しかし、博多織は細い経糸を使用しているため、重量感はなくむしろしなやかな手ざわりです。
高密度の経糸を使うことによって帯の強度が生まれ、使いやすい仕上がりになるのですね。
くずれにくい
博多織の帯は、一度締めるとなかなかくずれません。
細い経糸と太い緯糸(よこいと)を組み合わせているからです。
そのため、じょうずに締められなくてもくずれにくい織組織になっています。
帯を締めるのに慣れていないと、きれいにできたように見えても、だんだんほどけてくることがあります。
博多織の帯なら時間が経ってもくずれにくいので、初心者にとっても心強いですね。
シワが残りにくい
帯をほどいたあとは、必ずといっていいほど結びシワができます。
シワが取れるようにメンテナンスをしても、なお残ってしまうのは困りものですね。
博多織の帯は、経糸の密度が高くしなやかです。
そのため、長時間締めてもあまりシワが残りません。
メンテナンスの手間がかからず扱いやすいのも、初心者向きといえます。
帯を締める自信がなくても、博多織の帯なら使いやすそうね!
博多織の帯は、江戸時代の商人や武士に愛用されていました。
大小の刀を差してもくずれない帯は、博多織ならではの特徴ですね。
博多織の歴史
そもそも博多織の名が知られるようになったのは、江戸時代でした。
緻密(ちみつ)で固く耐久性があったと言われる「広東織(かんとんおり)」が、博多織の始まりと考えられています。
この章では、博多織がどのようにして生まれたのかを、大まかに見ていきましょう。
博多織の起源
室町時代末期の博多は貿易港として栄えており、中国との交流も盛んでした。
中国から上質な生糸を輸入し、帰化人からの織技術伝承によって唐織(からおり)が織られていたようです。
西陣織もそうですが、多くの織物の技術は中国から伝わっているのですね。
安土桃山時代になると、組紐師(くみひもし)の竹若伊右衛門(たけわかいえもん)が唐織を帯地として改良工夫しました。
この独特の織物が、博多織の始まりといわれています。
江戸時代の博多織
1600年の関ヶ原の戦での功績により、黒田長政が初代の筑前福岡藩主になりました。
そのさいに、竹若伊右衛門が改良した織物を長政に献上します。
長政はこれを気に入り、幕府献上品に指定しました。
幕府への献上品は帯地のほか羽織地や袴(はかま)地などで、「献上博多織」と呼ばれるようになります。
このことから、藩は博多織の品質保持を目的に織屋株制を作り、12戸の織元を指定しました。
保護を受けたとはいえ、作るのは献上品や藩の陣羽織(じんばおり)や軍旗などに限られ、自由に織ることはできなかったようです。
やがて江戸時代後期になると、藩内の経済成長のためようやく領民に博多織の着用が許されます。
しかしこの施策によって、織屋株を持たない業者が隠れて織物を作りはじめました。
織業者が増えたことで、織屋株制は消滅したようです。
のちに新たな組合が設立され、博多織は一般に流通することになります。
明治時代以降の博多織
明治になると、博多織はジャガード織の技術を導入します。
ジャガードの導入は西陣が早く、それから桐生に伝わりました。
博多に伝わったのはそのあとで、ジャガード織の導入で人の手による作業が軽減され、デザインの幅が広がりました。
その後、皇室への献上品などの多くの作品を作り出し、1976年と2011年に伝統工芸品に指定。
現在は帯地だけでなく、小物類など数多くの製品を展開しています。
以下の記事は、献上博多織の柄について解説しています。
博多織についてもっと知りたいかたは、ぜひお読みくださいね!
博多織の制作工程
一般的に知られている博多織は、「独鈷(とっこ)」「華皿(はなざら)」「縦縞(たてじま)」の紋様を経糸で表現した「献上柄」です。
献上柄といわれるものは、以下の画像のような連続模様です。
このほか、独鈷一筋だけを入れた「一献立て(いっこんだて)」、独鈷を中心に華皿を両側、縦縞を入れた「三献立て(さんこんだて)」などがあります。
献上柄の説明はこちらで詳しく解説していますので、参考にしてくださいね。
それでは、博多織の制作工程を紹介していきます。
図案(ずあん)
どのような紋様にするか、帯柄のデザインを決める工程
定番の献上だけでなく紋柄の絵柄も考案するので、優れた感覚が求められる作業
意匠(いしょう)
方眼紙に図案の織組織(経糸、緯糸の構成)を組みたてる工程
最近はコンピューターが導入されているが、方眼紙に一目ずつ色付けしていく繊細で神経を使う作業
精錬(せいれん)
天然繊維糸の不純物や汚れなどを取り除く工程
精錬していない糸は染料をはじくため無水炭酸ソーダや苛性ソーダを使い、数時間ていねいに洗う
染色(せんしょく)
精錬後の糸を染める工程
一定量の糸を綛(かせ)の状態にして、色見本を参考にムラなく染めあげる
季節や天候などで染め上がりに影響があるため、色見本どおりの色を出すには熟練の技が求められる
糸繰り(いとくり)
染色後の糸を再度枠木(わくぎ)に巻きなおす工程
次の工程をスムーズに進めるために、染めあがった綛の糸を枠木に巻きとる
整経(せいけい)
設計図に沿って経糸を一定の長さや本数に分けて並べ、ロール状に巻きつける工程
とくに博多織は多くの経糸で柄を表現するため、一本一本計算しながら巻きつけていく
経継ぎ(たてつぎ)
巻きつけた経糸を手織(てばた)機の経糸に一本ずつ結びつけていく工程
切れやすい絹糸を数千本も手作業で結ぶ、重要かつ神経を使う作業
緯合わせ(よこあわせ)
細い緯糸を数本の束状にまとめ合わせて、太い糸に仕立てる工程
太い緯糸と細くて密度の高い経糸を組み合わせることで、しなやかで丈夫な博多織になる
管巻き(くだまき)
緯糸を杼(ひ)にセットするため、管に巻いていく工程
管巻き機を用いて紡績型にしっかり巻きつける
製織(せいしょく)
手織機にセットされた経糸に、杼の緯糸をくぐらせ打ち込む工程
「打ち返し、三つ打ち」の伝統技法を使い、一定のリズムで打ち込み数を確認しながら織りあげていく
検品
完成した織物を検品する工程
通常数ヶ月〜半年で完成、厳密な検品を経て製品となる
博多織のしなやかさと強さの理由がわかると、手にとってみたくなりますね!
使いやすい博多織の帯で着物を着こなそう!
博多織の帯は、細い経糸を多く使い、緯糸は太く撚(よ)ったものでできています。
生地はしっかりしているのに、手に取るとしなやかで柔らかいのが特徴です。
博多織の帯が使いやすいといわれるのは、3つの理由があります。
- 経糸の密度が高く、丈夫でしっかりしている
- どんな締めかたでもくずれにくい
- 長時間締めてもシワが残りにくい
それゆえ、江戸時代には武士や商人の間で流行していました。
ひと昔前は男性用の帯として有名だった博多織ですが、現在は女性用の帯も増えています。
同じ高級品でも華やかな西陣織に対して、博多織は庶民に近いイメージですね。
それも人気の秘密になっているのでしょう。
ぜひ、博多織の帯を身につけて使いやすさを実感してみてくださいね。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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