読者さま久留米絣(くるめかすり)の着物や小物を見ていると、心が惹きつけられる柄があるんだよね。
久留米絣には、素朴な美しさ、そして奥ゆかしい藍の濃淡や様々な模様があることが特徴ですね。
それらは単なる模様ではなく、古くからその地で生きてきた人々の願いや知恵、そして物語が込められた「生きた文様」です。
この記事では、久留米絣の基本的な知識から、「柄に隠された意味」を徹底解説します。



柄の意味を知ることで、着物選びがもっと楽しく、そして特別な時間になるはずです。
久留米絣とは?産地や歴史その作り方を解説


久留米絣は、日本の三大絣の一つに数えられる国指定の重要無形文化財です。
まずは、その魅力を支える基礎知識から見ていきましょう。
産地
久留米絣は、その名の通り、現在の福岡県久留米市を中心とした筑後地方で作られています。
この地域一帯は、藍染めの原料となる藍の栽培や、絣の主要な素材である綿花の栽培が盛んで、絣織物に適した風土が古くから根付いていました。
歴史
久留米絣の歴史は、約200年以上前の江戸時代後期に始まります。
発祥のきっかけは、久留米の機織りの少女であった「井上伝(いのうえでん)」が、偶然、使い古しの布に残った色落ちのムラをヒントに、意図的に糸をくくる技法を編み出したことだと伝えられています。
彼女の工夫と努力により、久留米絣の技法が確立され、その後、瞬く間に全国へと広まっていきました。
作り方
久留米絣の最大の特徴は、糸の段階で模様を染め分ける「括(くく)り」の工程にあります。
- 図案作成: まず緻密な設計図を作ります。
- 括り(くくり): 模様にならない部分を、綿糸で堅く手作業で括ります。
- 染色: 括ったまま藍甕(あいがめ)で染めます。括った部分は染まらないため、そこが白く残り、模様の元になります。
- 織り: 染め分けられた縦糸と横糸を、織り機で一本一本手作業で合わせて織り上げることで、独特のにじみを持つ模様が生まれます。



この手間暇かかる工程こそが、久留米絣に独特の温かみと素朴な美しさを与える秘密です。
久留米絣の柄がもつ3つの意味


久留米絣の柄の多くは、単なる装飾ではなく、人々の生活に密着した「意味」を持っています。大きく分けて、次の3つの視点から柄を読み解くことができます。
自然の恵みを表現する意味
久留米絣の柄には、自然界の動植物や現象をモチーフにしたものが多くあります。
例えば、麻の葉や亀甲など、自然界の形を写し取った柄には、その生物が持つ力強さや生命力への憧れや感謝が込められています。
自然と共に生きる人々の素朴な感性が反映されています。
縁起を担ぐ意味
特定の柄には、魔除けや長寿、子孫繁栄といった願いが込められています。
これらを総称して吉祥文様(きっしょうもんよう)と呼びます。
人生の節目や、新しい門出に着用する着物や小物にこうした柄を選ぶのは、柄に込められた「幸せへの願い」を自分自身や大切な人に託すためです。
日常生活から生まれた意味
絣の柄の中には、井桁(いげた)や銭形など、日々の暮らしの中で使われる道具や、身近な光景から生まれたものも多くあります。
これらは、生活の知恵や安定への願いを象徴しており、久留米絣が特別なハレの日だけでなく、日常着として親しまれてきた証拠でもあります。
代表的な久留米絣の柄と意味


ここからは、着物初心者の方が特に知っておきたい、代表的な久留米絣の柄と、それに込められた深い意味を詳しくご紹介します。
| 柄の名称 | 意味・由来 |
|---|---|
| 市松(いちまつ) | 永遠・繁栄。柄が途切れず続くことから「発展」「永遠」を意味し、子孫繁栄や事業拡大の願いが込められています。 |
| 麻の葉(あさのは) | 成長・魔除け。麻は成長が早く、生命力が強いため、子供の健やかな成長を願う柄です。また、魔除けの意味もあります。 |
| 七宝(しっぽう) | 円満・ご縁。同じ大きさの円が四方に無限に繋がることから、「円満・調和」や「ご縁が途切れない」という意味があります。 |
| 青海波(せいかいは) | 永遠の幸せ・平穏。海がどこまでも広がる波の模様は、「永遠に続く幸せ」や「穏やかな暮らし」を象徴します。 |
| 亀甲(きっこう) | 長寿・健康。亀の甲羅の形に由来し、長寿と健康を願う最も縁起の良い吉祥文様の一つです。 |
| 矢絣(やがすり) | 縁起担ぎ・魔除け。射た矢が戻らないことから「出戻らない」という意味が転じて、門出を祝う柄となりました。卒業祝いにも人気です。 |
| 井桁(いげた) | 家内安全・生活の安定。井戸の縁の形を図案化したもので、生活の基盤や家庭の安定を願う意味が込められています。 |
久留米絣の柄と意味を知って着物を選びを楽しもう


デザイン性で楽しんでいたものが、意味を知ることでメッセージ性を持たせる
久留米絣の柄は、単に美しいだけでなく、私たちの日々の暮らしや人生の節目を彩る深いメッセージを持っています。
- 自然への感謝や生命力
- 家族の安全や成長への願い
- 永遠に続く幸福への祈り
これまで、絣の模様を「可愛い」「おしゃれ」といったデザイン性で選んでいたかもしれません。
しかし、そこに込められたメッセージ性を知ると、着物選びは一気に深みを増します。
- 「亀甲柄」の着物を選べば、「健康で長生きしたい」という自分自身へのエールになります。
- 「麻の葉柄」の帯を選べば、「健やかな成長と魔除け」という大切な人への祈りを込めることができます。
柄が持つメッセージ理解すれば、着物を選ぶ時間が自分自身と向き合う特別な時間になります。
ぜひ、あなた自身の願いや、送りたいメッセージにぴったりの久留米絣を見つけて、着物ライフをもっと楽しんでください。



柄の意味を知ることで、あなたはなぜその柄に惹かれたのか、その答えが見つかったかもしれません。
久留米絣の柄と意味を知って着物との出会いを大切にしよう
この記事では、久留米絣の柄と意味を解説していて、初心の方にもわかりやすい内容となっています。
始めに久留米絣の歴史についても触れており、福岡県久留米市で江戸時代に生まれた国の重要無形文化財です。
糸を括って染める「括り(くくり)」という独自の手法から生まれる素朴な美しさが、魅力の一つになっています。
久留米絣の柄は、単なる模様ではなく、3つの意味を持っています
- 自然の恵み
- 縁起
- 日常生活
代表的な柄には、人々の切実な願いや物語が込められています。
- 市松(永遠)
- 麻の葉(成長)
- 亀甲(長寿)
久留米絣の柄には、長寿、成長、円満といった人々の切実な願いや物語が込められています。
単なる模様としてではなく、メッセージとして柄の意味を知ることで、着物選びがさらに特別な体験になります。
ぜひ、この記事で学んだ知識を活かし、その深い魅力を味わってください。
最後までお読みいただきありがとうございました。













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