母の形見に「西陣織の帯」があるのですが、私にはどういうものかわからないんです。
西陣織は京都の代表的な織物です。
鮮やかな色彩や豪華な柄が特徴でとても価値の高い織物なんですよ。
そうなんですね!
西陣織についてぜひ教えてください。
西陣織は京都の西陣地区で作られる高級絹織物です。
西陣織は、京都の西陣で生産されている先染の紋織物の総称で、西陣織工業組合に所属している企業が生産しています。
伝統工芸品にも指定されており、伝統工芸品の証である伝統マークを使用した証紙が付いています。
西陣織は手の込んだ工程で作られ、たくさんの品種がありますが、生産量は少なく、それが高級絹織物と言われる所以です。
西陣織は、反物だけでなく、色々なものに加工されています。
その中でも人気があるのが帯です。
ちなみに西陣織の帯にはメガネ型の西陣の帯証紙がついているので目安にすると安心です。
着物と帯の組み合わせ方として「染めの着物に織りの帯」という言葉があります。
簡単に言えば、染めの着物と織りの帯はベストマッチだということです。
そして、この組み合わせを守れば初心者でも失敗しませんし、第一礼装にも使えるルールです。
京都発祥で織りの帯に分類される西陣織の帯には、やはり京都発祥の友禅染の着物がよく合うと言われています。
そこで、今回は西陣織のベストパートナー友禅についても解説します。
両方の違いを知れば、コーディネートを考えるのがもっと楽しくなりますよ!
さらに、西陣織の魅力をたっぷり体験できる施設もご紹介しています。
- 西陣織の特徴と愛される魅力
- ベストパートナー友禅との違い
- 西陣織の魅力を感じられる施設を紹介
この記事を読めば、あなたも西陣織通になれますよ。
西陣織の魅力を知って、あなたのセンスで西陣織を楽しんでください。
ぜひ、最後までお読みくださいね。
西陣織の特徴と愛される魅力
西陣織は京都市街の北西部、通称西陣と呼ばれる場所で作られる絹織物です。
西陣織には、西陣織ならではの特徴や魅力があり、京都の装いに欠かせない織物としてたくさんの方に愛用されています。
そこで、この章では、西陣織の特徴から愛される魅力を紐解いていきます。
- 先染めの糸を使っている
- 職人の高い技術と多数の工程により製造される
- 丈夫でシワになりにくい
- 多品種少量生産方式が採用されている
先染めの糸を使っている
西陣織の最大の特徴は、先染めの糸を使って織り上げられていることです。
西陣織では、美しくつややかな色に染められた糸を使っており、多いときには50色もの色糸を使って図柄に合わせて織っていきます。
その結果、色彩豊かな織物として仕上がり、美しい色彩は多くの人を魅了しています。
また、糸によって図柄を表していることから滲みなどがなく、模様は精密に美しく描かれていて、文様美も魅力のひとつです。
その色彩美と文様美から、西陣織は豪華絢爛と表されることが多い織物です。
続いて、西陣織を作る工程を紹介します。
職人の高い技術と多数の工程により製造される
西陣織には、色彩美と文様美を実現するための綿密に組み上げられた多数の工程を経て製造されます。
後でお話するように、西陣織で認定されている品種は12種類です。
この品種によって細かい違いはありますが、大まかな工程を紹介します。
まずは、図案(ずあん)を作成する工程です。
この工程では西陣織の図柄のデザインをします。
具体的には、出来上がりのイメージを考慮しながら図案家が西陣織の模様に落とし込んでデザインしています。
次は、紋意匠図(もんいしょうず)を作成する工程です。
紋意匠図(もんいしょうず)とは、先程の工程で作成した図案を西陣織で表現するための設計図です。
西陣織は織物なので、縦糸である経糸と横糸である緯糸で作られた小さな四角の集合体で図柄を表しています。
そこで、小さな目の方眼紙に1マス1マス色をつけていき、図案をどのように織り上げるのかを色分けした設計図を作成しています。
続いて、原紙(げんし)を成形する工程です。
繭から糸を取り出し、細い糸を組み合わせたり、絡ませたりしながら強度の強い糸を成形しています。
この原糸は「撚糸(ねんし)」とも呼ばれます。
その次は、糸染め(いとぞめ)と呼ばれる工程です。
糸を染めて、紋意匠図で決められた必要な色の糸を製造します。
この糸染めの工程は、先染めの西陣織の中で最初の要の作業で、紋意匠図で指定された色に染め上げるには職人の勘が大変重要です。
続いて、整経(せいけい)の工程です。
西陣織では2000~8000本の経糸(たていと)が使われます。
整経(せいけい)の工程では、整経機と呼ばれる機械を使って、経糸を織物に必要な長さと幅に整えています。
次は、綜絖(そうこう)の工程です。
西陣織では、織機に経糸を縦方向に掛け、この経糸を上下に分けたり、引き上げたりしてその間に緯糸を通すことで模様が作られます。
経糸の上げ下げ具合が模様の出来上がりに大きく作用するため、綜絖の工程では、経糸の一本一本に上げ下げの指示を出せるようにします。
なお、綜絖は、この工程のこと、経糸の一本一本に上げ下げの指示を出す仕組みのことも指す用語です。
綜絖には、西陣織の技術が集約されていて、最も要になる工程です。
その次は、製織(せいしょく)の工程です。
製織は織り作業のことで、世界中の織物と同じ作業をおこないます。
整経で所定の長さと幅に整えられた経糸を織機に掛け、綜絖を使って動かし、緯糸を通して織り上げます。
最後の工程は、箔切り(はくきり)です。
織り上げた織物の裏の不要な糸などを、手作業で取り除きます。
この作業をおこなうと、織物の不要な部分が除かれ、重さが軽くなります。
特に帯の場合は、軽くなる上、厚みも薄くなって結びやすくなるため、箔切りは非常に大切な作業です。
このように職人の熟練された作業や勘で成り立つ綿密な工程を経て、豪華絢爛と言われる西陣織は生み出されています。
西陣織を愛する多くの人はこの緻密な工程にも美しさを感じているようですよ。
丈夫でシワになりにくい
さきほど、西陣織の最大の特徴は「先染めの糸を使って織り上げられていること」だと紹介しました。
先染めの糸を使っているので、西陣織には丈夫でシワになりにくい特徴があります。
その理由は以下の通りです。
- 摩擦や光に強く色落ちしにくい
- 強度が高い先染めの糸を使うため、型崩れしにくくシワにもなりにくい
西陣織は、色がしっかりと入った先染めの糸を使うため、摩擦や光に強く色落ちししにくく丈夫であるという特徴を持ちます。
また、強度が高い先染めの糸を使うため、型崩れしにくく、シワにもなりにくいのも特徴です。
西陣織は豪華絢爛な美しさだけでなく、丈夫でシワになりにくいという実用性も兼ね備えており、美しいまま長く使える点でも多くの人を魅了しています。
西陣織の帯は先染めの糸を使ったしっかりした織物なので、美しいまま長く愛用できるのですね。
多品種少量生産方式が採用されている
西陣織では多品種少量生産方式が採用されています。
昭和51年2月26日付で国の伝統的工芸品に指定されており、認定されている品種は以下の表にまとめたように12種類あります。
綴織(つづれおり) | 経錦(たてにしき) | 緯錦(ぬきにしき) | 緞子(どんす) |
朱珍(しゅちん) | 紹巴(しょうは) | 風通(ふうつう) | 綟り織(もじりおり) |
本しぼ織 | ビロード | 絣織(かすりおり) | 紬(つむぎ) |
上記の12種類の品種は、それぞれの企業で手の込んだ工程で製作されているため大量に生産されていません。
多品種少量生産だからこそ、個性のある製品が生み出され、人々に愛用されているのです。
12種類の品種については別の記事で紹介しますので、楽しみにお待ちくださいね。
続いて、西陣織と同じ様に京都発祥で有名な染め物である友禅と比較しながら、西陣織の特長を見ていきましょう。
西陣織とベストパートナー友禅との違いは
京都の定番の装いで、代表的なのは「友禅の着物に、西陣織の帯」です。
友禅は友禅染で染められる染物で、白い生地に模様を描いて染めて製造されます。
京都の舞妓さんはこの装いが多く、西陣織と友禅はベストパートナーです。
この章では、西陣織とベストパートナー友禅との違いを解説します。
両者の違いを知ることで、コーディネートがもっと楽しくなりますよ!
- 染め方の違い
- 種類の違い
- 使い方の違い
染め方の違い
西陣織と友禅の一番の違いは、染め方です。
下の表にそれぞれの特長をまとめました。
前の章でも紹介したとおり、西陣織は糸を先に染めて織り上げる先染め、友禅は、生地に模様を描いて染める後染めです。
先染めの西陣織は、分厚くしっかりした織物となり、重厚さも併せ持つ豪華絢爛な織物に仕上がります。
後染めの友禅は、生地が柔らかく、優雅に仕上がります。
柔らかい質感と優しい表情が魅力の友禅の着物に、重厚さも併せ持つ西陣織の帯とを合わせると全体が引き締まってみえますよ。
種類の違い
ここでは、西陣織と友禅の種類の違いを見てみましょう。
下の表にそれぞれがどのような種類に分かれているのかまとめました。
西陣織は12品種の織り方が伝統工芸品として登録されており、友禅で代表的なものは3つあります。
西陣織の登録された12品種はそれぞれの技法が異なり、織りあがる表情が全く違うのが魅力です。
これに対し、友禅は主に3種類と少なめではありますが、種類ごとに異なった表情を持っているのが魅力です。
西陣織の帯と合わせる友禅の着物の種類を変えると、イメージがガラッと変わって楽しいですよ。
使い方の違い
ここでは、西陣織と友禅がどのような製品に加工されているかを見てみましょう。
下の表に、それぞれを用いた製品の例を挙げました。
表を見て分かるように、それぞれ色々なものに加工されていますが、西陣織は帯、友禅は着物が代表的な製品として知られています。
西陣織は豪華な模様と種類がたくさんあるのが特徴です。
そのため、表にも示したように帯や着物だけでなく、小物や洋装、アクセサリーなどの装飾品などにも使われています。
和装に西陣織の小物を取り入れたり、洋服でも小物だけ西陣織のものにして個性的な着こなしを楽しめますね。
西陣織のいろいろな使われ方はこちらの記事で紹介しています。
ぜひ、お読みくださいね。
西陣織の魅力を体験してみよう!
西陣織は京都の代表的な伝統工芸品です。
京都を訪れた際は、実物を見てみたい、製作しているところを見てみたいと思いませんか?
この章では、西陣織の魅力をたっぷり体験できる施設を3つ紹介します。
- 西陣織工業組合 西陣織会館
- 手織ミュージアム 織成館
- 綴織技術保存会 奏絲綴苑
西陣織工業組合 西陣織会館
西陣織会館は、「観る」「学ぶ」「着る」「体験」「買う」ができる施設です。
「学ぶ」では、西陣織ができるまでのジオラマ展示や職人実演などの見ごたえのある展示物があります。
「着る」では、小紋のおしゃれ着を借りて、着物を着付けてもらい、そのまま京都の観光へ行くことも可能です。
「体験する」では、創作の体験もできます。
西陣織会館では、写真の西陣織のテーブルセンターのほか、西陣織を筒の外側に貼った万華鏡の創作体験ができます。
手織ミュージアム 織成館
織り屋を営む渡文(わたぶん)の手織工場を見学できたり、手織り体験ができたりする施設です。
渡文は、西陣織の帯を実際に製造している工場なので、現場の雰囲気が感じられます。
織成館では、体験のほかに「手織りミュージアム」での展示や「ミュージアムショップ」でのお買い物も楽しめますよ。
綴織技術保存会 奏絲綴苑
奏絲綴苑は綴織の技術保存を目的として、職人たちが集まった組織です。
この施設では、機械を使用せずに人の手足のみを使って織った帯、額や掛け軸、アクセサリーなどを販売をしています。
また、工房の見学や16機ある織機で体験でき、綴織の魅力を味わえます。
奏絲綴苑では、上記の布を織るコースのほかにコースターやランプシェード、アクセサリーを作る体験もあります。
お好きなコースで体験できますよ。
3つの施設以外にも、西陣地区にはいろいろな施設があります。
ぜひ西陣織の魅力を体験してみてください。
【まとめ】豪華絢爛な西陣織の特徴と魅力を知って着こなしましょう!
西陣織は色彩美と文様美を兼ね備えた豪華絢爛さが魅力です。
その美しさは、国内だけでなく海外の方にも高い人気を誇ります。
今回は、豪華絢爛で多くの人に愛される西陣織の特長から魅力を紐解きました。
振り返ってみましょう。
- 【特徴1】先染めの糸を使っている
-
色彩美と文様美を併せ持つ豪華絢爛さが魅力。
- 【特徴2】職人の高い技術と多数の工程により製造される
-
職人の熟練された作業や勘で成り立つ綿密な工程を経て、豪華絢爛な西陣織は生み出されている。
この緻密な工程に美しさや魅力を感じる人も多い。
- 【特徴3】丈夫でシワになりにくい
-
西陣織は豪華絢爛な美しさと丈夫でシワになりにくいという実用性も兼ね備えており、美しいまま長く使えことも魅力。
- 【特徴4】多品種少量生産方式が採用されている
-
多品種少量生産方式のため、1つの製品の生産数は少なく、オリジナリティー溢れる製品を手に入れられるのも魅力。
また、今回は、「織りの帯に染めの着物」という言葉にあるように、織りの帯である西陣織の帯のベストパートナーである染の着物の代表友禅についても調べ、比較しました。
西陣織 | 友禅 | |
染め方 | 先染め|重厚で豪華 | 後染め|柔らかく優雅 |
種類 | 多品種少量生産で12品種 | 代表的なのは日本三大友禅 |
使い方 | 代表的なのは帯 アクセサリーなどの小物品 | 代表的なのは着物 |
西陣織と友禅にはこのような違いがあります。
違うからこそ、組み合わせて美しく、ベストパートナーと言えるんですね。
西陣織について学んだ読者さまに西陣織を体感して頂きたいと思い、体験施設のご紹介もしました。
- 西陣織工業組合 西陣織会館
- 手織ミュージアム 織成館
- 綴織技術保存会 奏絲綴苑
西陣織の最大の魅力は、色彩美と文様美により醸し出される豪華絢爛さと重厚さです。
そして、この西陣織は職人の腕や高い技術を用いた緻密な工程から生み出されており、その工程にも美しさを感じますね。
西陣織をより深く知ったことで、あなたの着物ライフがより楽しいものとなったなら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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