西陣織の帯が家にあるのですが、その模様がとてもきれいで魅了されます!
西陣織は糸を先染めして作られる絹織物です。
多いものでは50色ほどの糸を使って織られています。
すごいですね!
西陣織の糸や種類について詳しく教えてください。
西陣織は鮮やかな色彩と豪華な模様が特徴の高級絹織物です。
その色彩や模様は先染めの糸から作られていて、糸は最重要の素材といえます。
上品で美しい西陣織を織りなす重要な素材の糸、その魅力を紹介しましょう。
また、伝統工芸品に指定されている西陣織の12品種と、その伝統文様にもスポットを当てて解説します。
繊細で手の込んだ工程で作られる西陣織は京都だけでなく、日本全国の着物ファンの憧れですよね。
この記事を読めば、西陣織の帯にもっと魅了されますよ。
- 西陣織の重要素材の糸について
- 西陣織の12品種について
- 西陣織の文様について
ぜひ、最後までお読みください。
西陣織の重要素材|糸について知る
西陣織の最大の特徴は、糸を先に染めて織り上げる手法です。
50色以上の糸を使って織られる帯地もあり、西陣織の華やかで繊細な模様は、この先染めの糸から作られているんです。
この章では西陣織の魅力を引き出している糸について、3つの視点から解説します。
- 西陣織の糸の絹糸とは
- 西陣織の糸に関わる工程
- 西陣織の糸の色
それでは、素材となる絹糸の製造工程からみていきましょう。
西陣織の糸|絹糸
西陣織の糸は絹糸です。
絹糸は、蚕の幼虫が生み出した繭(まゆ)からいくつかの工程を経て作られています。
簡単に紹介しますね。
- 蚕の幼虫が生み出す繭は、細い1本の糸からできていて長さが1500mほどあります。
1本では強度が弱いので、複数の繭から糸を引き出して1本の糸にしたものを、生糸(きいと)と呼びます。 - 生糸はフィブロインという繊維の芯があり、その周りをセリシンと呼ばれるタンパク質が覆っています。
セリシンの覆われた糸はゴワゴワと硬いので、セリシンを取り除く作業が必要です。
その作業を精錬(せいれん)といいます。
このように、精練の作業でセリシンが取り除かれ、柔らかく光沢のある絹糸が誕生します。
続いて、西陣織の絹糸を使用する工程を見ていきましょう。
西陣織の糸|工程
西陣織は鮮やかな色彩と豪華な模様を出すために、綿密に組み上げられた多数の工程があります。
- 図案
- 紋意匠図(もんいしょうず)
- 撚糸
- 糸染め
- 整経
- 綜絖(そうこう)
- 製織
- 箔切り
上記の工程のうち、3~5の工程が糸の工程になります。
撚糸 | 絹糸を何本かにまとめて太さを調整したり、撚りをかけて風合いを出したりと、図案に合う糸に仕上げる工程 |
糸染め | 西陣織の図案で決められた色に染める工程 |
整経 | 整経機で経糸を必要な長さと幅に整える工程 |
西陣織の工程はこちらの記事で詳しく紹介しています。
西陣織の優れた技術も感じられますので、ぜひ、お読みください。
西陣織の糸|色
西陣織の帯は、多い時には50色もの糸が使われます。
では、絹糸の色はどのようなものがあるのでしょうか?
絹糸の色は染め方によって、無限大に広がります。
同系色でも微細な違いあり、その違いで西陣織の豪華な模様が表現されています。
同じ色でも風合いに違いがあることがわかりますね。
続いて、代表的な色の名前を紹介します。
菫色(すみれいろ) | 紫紺(しこん) | 藤色(ふじいろ) | 唐茶(からちゃ) |
金茶(きんちゃ) | 芥子色(からしいろ) | 紅色(くれないいろ) | 朱色(しゅいろ) |
山吹(やまぶき) | 黄色(きいろ) | 抹茶(まっちゃ) | 漆黒(しっこく) |
聞いたことがある色の名前が多いですね。
名前を聞いただけでなんとなく色味が想像できますね!
次は、聞きなじみのない色の名前を紹介します。
青系 | 青鈍(あおにび) | 瑠璃(るり) |
緑系 | 木賊(とくさ) | 常盤(ときわ) |
赤系 | 唐紅(からくれない) | 一斤(いっこん) |
黄色系 | 黄丹(おうに) | |
茶系 | 憲房(けんぽう) | 璃寛茶(りかんちゃ) |
名前を聞いても、どのような色かわからない名前が多いですね。
珍しい色の名前の中には、身分によって使われていた色や色自体に意味のある色などさまざまな解釈があります。
- 「常盤」不老長寿の色
- 「黄丹」親王や皇族に限定された色
- 「璃寛茶」江戸時代、限られた人だけが身につけられる色
- 「瑠璃」仏教で七宝のひとつとして使われた色 など
その解釈を知って西陣織をみると、魅力が倍増しますね。
次の章では西陣織の品種について解説していきます。
西陣織の種類|12品種について知る
西陣織は、多品種少量生産が特徴の京都で生産される先染の紋織物です。
昭和51年2月26日に国の伝統工芸品と指定されました。
伝統工芸品として、登録されている種類は12品種あります。
それぞれ紹介していきますね。
綴織(つづれおり)
綴織は、西陣織の中で最も有名な織り方です。
- 経糸だけで模様をだして織りあげる
- 職人の爪を刃物のようにカットして模様を出す(爪掻き)
経糸だけで模様をだして織り上げることで知られています。
綴織は、職人本人の爪を刃物のようにカットして道具として用いる「爪搔き」という技法が特徴です。
紹介動画がありますので、ご覧ください。
絵画のような繊細な模様を織り上げられていましたね。
経錦(たてにしき)
先染めで染められたさまざまな色の糸を使って織り上げる絹織物を「錦」と言います。
- 経糸(たていと)で模様を作り出す
- 表面にも裏面にも美しい模様が現れる
模様を作るための横糸を使わないので、比較的軽く仕上がり、締めやすく、シワになりにくい利点があります。
緯錦(ぬきにしき)
緯錦は、「錦」の中では経錦とならんで代表的な織物です。
特徴は3つあります。
- 緯糸(よこいと)に色糸を使い模様を織り出す
- 大きい模様を織り出す
- たくさんの色を使って織り出す
歴史は古く、奈良時代ごろから織られていて、最も華麗な織物とも呼ばれています。
緞子(どんす)
緞子は、繻子織(しゅすおり)の一種です。
- 厚みがあり重厚感がある
- 手触りがやわらかで、光沢がある
- 高級織物と言われ、帯に使われることが多い
「経糸が4本の緯糸をおおう形」とイメージされるとわかりやすいです。
経糸の露出が多いので、厚みが出て、光沢がありますが、強度が弱いというマイナスな面もあります。
童謡花嫁人形の歌詞の中に「金襴緞子の帯締めながら……」とあり、聞きなじみのある織物ですね。
朱珍(しゅちん)
朱珍は、繻子織の生地に七色以上の色糸を使用し、経糸で文様を織り出した織物のことです。
- 日本では室町時代から織られていた
- 金銀箔を使うなど、華やかで豪華な仕上がり
紹巴(しょうは)
紹巴は、緯糸が経糸を覆うように織られています。
- 緯糸だけで模様を作り出す
- 細やかな模様が多い
- 厚みがなく、シワになりにくい
風通(ふうつう)
風通は、経糸と緯糸で異なる色を使用し、表の模様と裏の模様の色が反対になる織り方です。
- 柔らかくて軽い
- 発色よく織り上げることができる
二重織とも呼ばれます。
綟り織(もじりおり)
捩り織は、「からみ織」とも言われ、経糸が別の経糸と絡み合う構造になっています。
- 通気性がよい
- 仕上がりが、軽やかで涼しげである
涼しげな織物イコール夏に着る「絽(ろ)」の着物などが、代表的ですね。
本しぼ織
本しぼ織は、強い撚りをかけた絹糸を使用し、糊をつけた状態でぬるま湯につけて、表面に凹凸を出します。
この凹凸を「しぼ」と呼び、本しぼ織と呼ばれるようになりました。
- 光沢がある
- ふっくらとした高級感がある
本しぼ織はとても手間のかかっている織り地です。
ビロード
ビロードの織り方は独特で、針金を織り込み、経糸を切って起毛させたり、針金を抜いて空間を出したりしています。
- なめらかな肌触り
- やわらかな光沢
ベルベットととも呼ばれていて、聞いたことがあるかもしれませんね。
絣織(かすりおり)
絣織とは、絣糸と呼ばれる糸を使って模様を織り出す織物です。
- 木綿の素材で肌触りがよい
- 素朴で、味わいのある柄が多い
- 庶民の普段着として親しまれてきた
絣織の技法は、「くくる」「そめる」「おる」の工程があります。
- 糸をくくる
- 糸をそめる
- 糸をおる
この3つの段階で少しずつズレが発生し、そのズレがかすれたような模様が生み出されます。
紬(つむぎ)
紬は、真綿を手で紡いで糸にした「紬糸」を使用して織り上げています。
- 絹独特の光沢感がある
- 色落ちや痛みに強い
- 着け心地にハリがある
丈夫で素朴な織物なので、日本全国でこの手法が用いられていました。
西陣織の紬は、京都「都」の感覚が出ていることから「都ぶり」と名前がついています。
西陣織12品種をご紹介しました。
それぞれの手法や特徴はとても興味深いですね。
続いて、西陣織の模様について深掘りしていきます!
西陣織の美しさ 模様を知る
これまで、西陣織の先染めの糸とその糸を使って織られる品種について紹介しました。
では、西陣織の模様はどのような模様があるのでしょうか?
西陣織の模様は、図案専門の職人が考え、その図案をもとに設計図である紋意匠図(もんいしょうず)が作られます。
模様の種類はたくさんありますが、正倉院文様や自然や風景をモチーフにした文様が代表的です。
この章では、繊細に作られた糸を使って織り出される定番の模様についてスポットを当てて解説します。
正倉院文様
正倉院文様は、奈良にある宝庫「正倉院」の中にある工芸品や装飾品に描かれた模様の事です。
- 連珠文様(れんじゅもんよう)
- 宝相華文様(ほうそうげもんよう)
- 花喰鳥文様(はなくいどりもんよう)
- 獅子文様(ししもんよう)
それでは、正倉院文様をご紹介します。
連珠文様(れんじゅもんよう)
連珠文様とは、丸い珠を円のように描く模様のことをいいます。
丸い円の中には、鳥や動物、花などが描かれることが多いです。
こちらの写真は、茶道の仕覆(しふく)の模様が連珠文様です。
宝相華文様(ほうそうげもんよう)
宝相華文様は、牡丹などの大きな花の美しい部分だけを組み合わせた空想の花の模様を言います。
宝相華は、華麗な花文様という意味があり、とても華やかな柄が多いです。
紹介している写真は、西陣織の袋帯で、上品かつ艶やかな印象がありますね。
花喰鳥文様(はなくいどりもんよう)
花喰鳥とは、縁起の良いと言われる鳳凰などの鳥が、花や小枝をくわえている様子を表しています。
このような理由で、花喰鳥の模様は、縁起のいい席で使われることが多い文様です。
こちらの花喰鳥の模様は、可憐で華やかな印象ですね。
獅子文様(ししもんよう)
獅子文様は、その名の通り獅子が描かれた模様です。
古代の獅子は、ライオンに似た動物が描かれていて、魔よけの意味があります。
自然や風景の文様
正倉院文様以外で多く見られる模様は、自然や風景をモチーフにしたものです。
代表的な4つを紹介します。
- 茶屋辻(ちゃやつじ)
- 雪輪(ゆきわ)
- 青海波(せいがいは)
- 観世水(かんぜみず)
見たことがある模様が多いと思いますよ。
茶屋辻
茶屋辻は、水辺の風景に家屋や草花を細かく描いた模様です。
大奥や武家の女性に好まれた格式の高い模様として、人気があります。
自然を絵画風に描いていて、落ち着いた優雅さが特徴です。
この写真は茶屋辻の打掛で、華やかで優雅ですね。
雪輪
雪輪の模様は、雪の結晶を表しています。
雪は、春に訪れる雪解けを表していて「豊作をよぶ」の意味で、縁起のよい模様です。
下の写真はとても厳かな雪輪ですね。
青海波
青海波は、「未来永劫平穏に」という意味が込められた吉祥文様です。
穏やかな波がどこまでも続いている模様は、日本だけでなく、世界各地で使われています。
紹介している写真の青海波は、とても遊び心あり、ところどころに猫や猫の肉球が波の模様の中に登場していますね。
観世水
観世水の模様は、水が渦巻いたような状況を表しています。
能楽の「観世流」が紋として使うようになったことから、この名前がつきました。
観世水には、「流れる水は腐らず」という意味があり、変わり続けていく未来を表した縁起のよい模様です。
西陣織の糸が織りなす模様について解説しました。
模様の意味を知っていると、着物や帯選びも楽しくなりますね。
西陣織の糸が織りなす12種類の品種と模様【まとめ】
西陣織の糸にスポットを当てて、12種類の品種と代表的な模様を紹介しました。
西陣織の中で、糸は最重要素材です。
その糸について、改めて振り返ってみましょう。
- 絹糸 蚕の幼虫の繭から取り出した生糸を精錬し、光沢のあるやわらかな絹糸に仕上げる。
- 工程 糸には撚糸、糸染め、整経の工程がある。
- 色 繊細な模様を織り出す色糸は無限の数があり、職人よって丁寧に染め上げられる。
先染めされた糸を使って、織られる西陣織の種類は12品種あります。
それぞれの特徴を紹介しました。
綴織(つづれおり) | 経錦(たてにしき) | 緯錦(ぬきにしき) | 緞子(どんす) |
朱珍(しゅちん) | 紹巴(しょうは) | 風通(ふうつう) | 綟り織(もじりおり) |
本しぼ織 | ビロード | 絣織(かすりおり) | 紬(つむぎ) |
西陣織の糸が織りなす代表的な模様は以下のとおりです。
正倉院文様 | 自然や風景の文様 |
連珠文様 | 茶屋辻 |
宝相華文様 | 雪輪 |
花喰鳥文様 | 青海波 |
獅子文様 | 観世水 |
西陣織は、緻密な作業で取り出された糸で、多数の工程を経て、登録された12品種に織られています。
その模様も、図案の職人によって受け継がれてきた、たくさんの魅力が詰まっています。
この糸を操る西陣織に関わる職人たちの高い技術力こそ、西陣織が世界各地で親しまれている理由です。
世界を魅了する西陣織の帯や着物を手に取って、ひとつお手元に置いてみませんか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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