
母の持ち物の中に塩瀬帯がありました。感触が気に入り、もっと塩瀬帯のことを知りたくなりました。



塩瀬帯は長い季節を使える便利な帯です。織りや柄など、塩瀬帯の魅力をご紹介します。
塩瀬帯とは、名古屋帯のひとつで、生地に張りがあり、キュッと締めやすい帯です。
使える季節が9月~5月と長いことも特徴のひとつ。
手描き友禅で、伝統的な柄、かわいらしい柄、斬新な柄、と様々な顔を見せてくれます。
この記事では塩瀬の織、柄などを詳しく説明いたします。
ぜひ最後までお読みくださいね。
・塩瀬帯の織・柄について
・塩瀬帯の使える季節
・名古屋帯の中での塩瀬の特徴
・塩瀬と新塩瀬の特徴
塩瀬帯とは?織りの特徴と柄の魅力を解説


塩瀬とは「塩瀬羽二重」の略で、新潟県五泉地方が主な産地の絹織物です。
羽二重は平織の絹織物で、経糸を2本ずつ並べて織るところから名づけられました。
薄くて軽い羽二重の中で、塩瀬は厚手の生地となります。
塩瀬の織り方の特徴
羽二重は、経糸(たていと)に細い生糸を使い、緯糸(よこいと)に濡らした太い生糸を使って平織にします。
これを「濡れ緯(ぬれよこ)」といい、表面に横畝が現れることが特徴です。
濡らした緯糸で織ると緯糸同士が水で密着し、密度の高い生地になります。
羽二重は1050g~1125gを重目としますが、1250~1400gとさらに重くした生地の厚いものが「塩瀬羽二重」です。
織り上がった生地を精錬すると軽く柔らかくなり、出来上がった白生地は、主に京都や東京の染工場で染められます。
模様を織り出した紋塩瀬、合繊で仕上げた塩瀬などもあります。
帯の他に半衿、袱紗、羽織などにも使われていますよ。
美しい手描きの柄
塩瀬は手描き友禅の帯の代表的な生地です。
白生地に後染めで柄を描きます。
染めの方法をご紹介しますね。
染めの種類 | 染めの方法 |
手描き友禅染 | 筆で絵を描くようにして染め上げる技法 白生地に一筆一筆手描きしていく |
絞り染 | 生地の一部を紐などで絞ってから染色する 絞られていた部分が模様や柄となって残る染色方法 |
辻が花染 | 模様の輪郭を細かく縫う「縫い取り絞り」や「帽子絞り」「桶絞り」「カチン染め」などの伝統的な技法を用いる絞り染め |
絞りに刺繍 | 絞り染めされた生地に、さらに刺繍を施す技法 |
更紗染 | インドの模様染め技法 茜や藍など植物由来の染料を使う |
ろうけつ染 | 溶かした蝋を筆などを使って模様を描き、その部分を染まらないようにする技法 |
紅型染 | 鮮明な色彩が特徴の沖縄の染め物 顔料と植物染料を使う |
多彩な柄がそろっていて、シーンに合わせて選べるのも魅力です。
塩瀬帯が使える季節は?


塩瀬帯は一年を通して楽しめる帯と言ってよいでしょう。
9月~5月は「塩瀬」、暑い季節は「絽塩瀬」と季節に合わせて使い分ければ、より快適におしゃれを楽しめますよ。
9月~5月まで使える
塩瀬帯は保温性が高いので、特に暑い季節を除いた9月~5月までの約9ヶ月使用できます。
絽目で織られた絽塩瀬は透け感がある夏用です。
塩瀬は絹織物ですが、レーヨン、アセテートといった化繊でも作られています。
季節をあらわす柄
塩瀬帯は夏以外の長い季節で使えますが、柄によってはその季節限定となります。
植物の柄では以下のような柄が使用されていますよ。
- 春:桜の咲き始めまでは桜の柄
- 秋:菊やイチョウの柄
- 冬:牡丹や椿柄
また、行事ごとに使用されているがらは以下のようにあり、特別なお洒落が楽しめます。
- ハロウィンの柄
- クリスマスの柄
- お正月には松竹梅のおめでたい柄
- バレンタインの柄
塩瀬帯の生地自体が季節を問わない分、デザインが自由なところがいいですね。
名古屋帯の中での塩瀬帯の特徴


名古屋帯には織と染があり、織の方が染の帯よりも格上となります。
仕立て方としては、帯芯を入れて仕立てる九寸名古屋帯と、帯地が厚く帯芯を入れない八寸名古屋帯があります。
幅広く使える名古屋帯
名古屋帯はセミフォーマルからカジュアルまで幅広く使える帯です。
カジュアル使いが多い名古屋帯ですが、織り生地の中でも金糸銀糸が使われた華やかな名古屋帯はセミフォーマルに使います。
また、フォーマルといえば丸帯、袋帯ですが、喪の場面では一重太鼓の帯が「不幸が重ならない」ようにという意味で、黒共名古屋帯が使われます。
織にくらべると染の名古屋帯は略装となります。
名古屋帯の染め帯の生地は塩瀬の他、ちりめん、綸子(りんず)、紬地(つむぎじ)があります。
塩瀬帯は染の帯のため、カジュアル向きの洒落帯といえるでしょう。
塩瀬帯の魅力
塩瀬帯は名古屋帯の中でもよりカジュアルな帯です。
八寸名古屋帯と九寸名古屋帯での格の違いはないのですが、八寸名古屋帯のほとんどは外出着から街着に合うようなカジュアルなものです。
塩瀬帯は、小紋、紬に合わせて普段のお稽古事、友人との食事、街歩きなどで着ておしゃれを楽しむことができます。
長い季節を使える便利さ、気軽さ、カジュアルさが塩瀬の魅力です。
注意したいのは、しわがついてしまうと取れにくいということです。



着用後は体温が残っているうちに手でやさしくしわを伸ばしてくださいね。
名古屋帯について詳しく解説しています。こちらも合わせてお読みくださいね。


塩瀬帯と新塩瀬帯


塩瀬のはじまりは袱紗(ふくさ)と言われています。
塩瀬の名前のはじまり
『きもの館 創美苑』のきもの用語大全によると「塩瀬の名称は、千利休の袱紗所(ふくさどころ)であった塩瀬九郎右衛門の名からつけられました」とあります。
袱紗所とは茶道で袱紗を管理する役職で、その名前が塩瀬羽二重の「塩瀬」という名称として使われるようになりました。
新塩瀬の特徴
塩瀬は絹織物ですが、化繊でできているものを新塩瀬といいます。
化繊のため扱いやすく、洗えることが特徴です。
新塩瀬帯は、すべりやゆるみがない正絹のような締め心地です。
塩瀬帯の魅力まとめ
これまで塩瀬帯について調べてきました。
塩瀬帯とは、塩瀬羽二重の帯です。
主に新潟県五泉地方の特産である絹織物「羽二重」の厚いものを「塩瀬羽二重」と呼び、その白生地に手描き友禅などで染めたものを「塩瀬帯」といいます。
染の方法には様々なものがあります。
- 手描き友禅染
- 絞り染
- 辻ヶ花染
- 絞りに刺繍を加えたもの
- 更紗染
- ろうけつ染
- 紅型染
名古屋帯のひとつである「塩瀬帯」はカジュアルに使える洒落帯で、9月~5月と、長い季節にわたって締められる使い勝手のよい帯です。
9月~5月…塩瀬帯
暑い時期…絽塩瀬
季節を問わない一方、季節ごとの様々な柄が描かれ、お正月などのおめでたい柄などもあり、自由なお洒落が楽しめる帯です。
また、「新塩瀬帯」という化繊の帯もあり、扱いやすく洗えることが特徴です。
・塩瀬帯…絹織物
・新塩瀬帯…レーヨン、アセテートなどの化繊
塩瀬帯は、季節ごとに表情を変えて寄り添ってくれる、頼もしいおしゃれアイテムです。
ぜひ塩瀬帯のお洒落を楽しんでくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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